『すぐ行くから。玄関で待っとけよ』
そう言って矢野くんは、
一方的に電話を切った。
「また、そういうこと…言う、」
イスに座り込む。
足の力が抜けて、
立てなかった。
「何考えてんだってーの…」
そうぼやきながらも、
矢野くんの言ったことに
従う自分がいる。
気付けば玄関に向かっていて。
早く来ないか、と
そわそわしている自分が
とてもとても恥ずかしい。
「早く…」
「朝から起こすなよな」
いつの間にか、
あたしの近くに来ていた矢野くん。
玄関の段に座っていたあたしの
隣に静かに座っている。
「わ、おはよ…矢野くん」
「今日寝不足で倒れたらどうすんの」
横で首を傾げて、
あたしを見るその姿が。
胸を締め付ける。
決して可愛らしい言い方でも
何でもないのに。
存在自体が、可愛くて
あたしの胸は張り裂けそうだ。


