「すぐ終わるから、玄関で待ってろって」
はあい、と。
悲しそうに返事をする彼女。
「あ、もうこれ終わってるし。矢野くん行っていいよ?」
「まだ終わってねぇよ」
ほら、と空欄を指さすけど。
あたしは何だか惨めになって。
「今日はあたしも用事あるし。だから…補習終わりね」
一方的に言い切ると、
彼女が嬉しそうに中に入って来て
矢野くんの傍に寄る。
そこは、あたしが入れない場所。
踏み込める彼女が、本当は嫌い。
「次は来週の今日だから、ちゃんと来てね」
そう言い残すと、
何か言ってる矢野くんを
無視して職員室に戻った。
いつかはこういう日が
来るとは思っていたけど。
こんなにも早いなんて、
予想もしてなかった。
「期待持たせんな、ばかやろぉ…っ、」
本当は勝手に期待なんて
しちゃってるだけなんだけど。
悔しいやら、悲しいやらで。
手元にあった矢野くんの
プリントは。
あたしの歪んだ気持ちの
せいでぐしゃぐしゃ。
「…ばかなの、あたしじゃんっ…」
自分が好きなばっかりに。
こんな思いしてるのに。
それでもあたしは
矢野くんを諦められなくて。
そんな自分が哀れで惨めで、
やっぱりものすごく情けない。