「先生…、あたしは、大丈夫です」
とりあえずこの場を丸めようと、
気の利かない言葉を吐く。
すると先生は意地悪な笑みで。
「朝比奈、熱は?」
「……あ、」
そういえばすっかり忘れていた。
あたし、ここに辛くて来たんだった。
「ふーん。風邪には男ね」
「いや、ちがっ…!」
声を発すると同時に、
先生はパソコンのある机に
戻って行った。
「三上先生が保健室に誰もいなくてって言うから、まさかと思えば」
三上先生。
さっき訪ねて来た1年生の担任。
「すいません…」
あたしは先生の前に立って、
頭を下げる。
隼人はカーテンを開けたものの、
未だベッドの上で胡坐をかいている。
「別にあたしはあんたも好きだし、あんなんでも弟だから、他に漏らしたりしないよ」
その一言にほっと一安心。
だけど先生は、少し厳しい表情。
「でもね。あんた教師だからさ」
短い一言。
たったそれだけなのに、
重みを感じる。
そうだ。あたし教師だ。
「好きになるのは自由だし、止めないけど。状況とか、場所とか、考えなさい」
何だか、本物のお姉さんに
言われているようで。
へこむ反面、嬉しかった。
「隼人、あんたも。朝比奈がどうなるか、とか考えなさい。欲より頭働かせろ」
ベッドの上にいる隼人に向かって、
そう言う先生。
隼人はうるせぇと呟いて、
下を向いた。


