「さっきからツンケンした態度だろ。何あっ…」
「矢野くん、帰るよ!ほら、玄関行こ」
慌ただしく動いて見せる。
何の意味のこもった心配か
あたしには分からない。
でも、もし何の意味もなくても。
あたしは元気にしてなきゃいけない。
「はい、荷物持って。先生だって忙しいんだからね?」
無理矢理、鞄を持たせる。
何か言いたそうな顔をして、
あたしに押されるまま
玄関に足を向ける矢野くん。
「……、」
「………」
無言が続く廊下。
すごく近い玄関が、
今日は遠く感じる。
「あのさ、」
「…な、に」
次の言葉を聞こうと思った時。
「隼人?」
透き通るような声が、
彼の名を呼んだ。


