「芽衣子、こっち向いて」
後ろから、優しく囁かれる。
耳元に温かい吐息がかかる。
それに反応したのか、
あたしの体も熱くなる。
「待って、矢野く…」
「待たない」
矢野くんはあたしの肩を引いて、
上を向かせると、
静かにあたしの上に乗った。
「矢野くん…」
「優しくする。なんて言えない」
暗くて見えないけど、
きっと矢野くんは真剣だと思う。
「優しく出来ないかもしれないけど」
矢野くんとあたしが、遠い。
さっきまで抱きしめてくれていたのに。
もっと近くに、来てほしい。
「お前を抱きたい」
本当はずっと思ってた。
キス以外してこない彼に対して、
魅力がないのかな、とか。
好きじゃないのかな、とか。
あたしだけが、矢野くんと
繋がりたいって思ってるのかな、とか。
「いいよ。優しくなんてしなくても」
抱きたい、って言ってくれて。
嬉しかった。
「そのままの矢野くんに、抱かれたい」
「芽衣子」
矢野くんは、あたしの名前を呟くと、
全身を優しく愛してくれた。


