「こちら、当旅館と、周辺の案内になっておりますので、よろしかったらご覧になってくださいね」
ごゆっくり、と女将さんは
床に膝を付いて、
頭を下げながらふすまを閉める。
それと同時に、あたしは
案内を手に取って
目を通した。
「すごーい!」
自然にあたしの目が光る。
だって、買い物する所とか、
観光出来る場所とか
たくさんあるんだもん。
「ね!矢野くん!」
「うーるさい」
呆れた顔を見せながらも、
あたしの隣に座って
同じように案内を見る。
「何。行きたいの?」
「うん!超行きたい!」
はしゃぐあたしを横目に、
矢野くんは、はあと溜息。
「はいはい。ほら」
矢野くんは、だるそうに立ち上がると
あたしに、手を差し出してきた。
「え、はい…?」
あたしは咄嗟に案内を渡す。
すると矢野くんは、
案内を床に捨てた。
「え、」
「何でそんなもん渡すんだよ」
そう言いながら、
矢野くんは強引にあたしの
手を掴んだ。
久しぶりに触れる、
彼の温もり。


