「着いたら起こすね」
「いや、起きてるし」
「何で?珍しい」
「寝んのもったいねえし?」
前を見ながら、
すまし気味に言う矢野くん。
あたしは思わず、
隣に目をやってしまう。
「ばか。前見ろって」
「あ、ごめん」
しょうがないじゃない。
矢野くんがびっくりすることばかり
口にするものだからつい。
あたしは前を向き直して、
真剣に運転を試みる。
だけど、隣にいる矢野くんに
触れたくて、その衝動を
止めることに必死でもあった。
それからあたし達は、
何度か休憩を挟みながら、
目的地に向かった。
周りを見れば、
見たこともない自然が
たくさんあった。
「矢野くん…、起きて?」
「ん…」
もったいない、とか
言っときながら。
普通に寝息を立てていた矢野くん。
ま、その方が運転に集中出来て、
よかったんだけど。


