「芽衣子」 そこに、違う人の声。 聞き覚えのある声が、 矢野くんの帰って行く方向の 反対側から聞こえてきた。 「…竣、」 時間を確認すれば、 まだ19時にはなっていない。 「早かったね」 「仕事早めに切り上げて来たから」 彼の息は、少し荒い。 走って来たのだろうか。 額に少し汗をかいている。