話をしたくないのに。
自ら話を始めてしまった。
「俺さ」
矢野くんは座らず、
あたしの背後で話を始める。
あたしは振り返れず、
背を向けて話を聞く。
「ずっと考えた」
あたしは何も言わず、
立ち尽くすだけ。
「もう待つなって言った日。俺はやっぱり生徒としてしか見られてねぇのかなって思った」
矢野くんがそう言うから。
あたしは、彼に最低なことを
言ったあの日のことを思い出した。
「矢野くんは…、生徒だから」
「俺は生徒で、お前は教師。そんなこと知ってんだよ」
いつになく低い声で。
真剣さが伝わってくる声色で。
あたしは背後にいる彼を、
意識してしょうがなかった。


