目の前の彼は、 どんな表情かも分からない。 灯り1つないこの場所。 「何…、してん、の」 「お前待ってた」 矢野くんはいつものように、 あたしを見下ろしている。 あたしは、目が見れない。 「暗いから気を付けてね」 もう何を言っても、 この関係は変わらない。 あたしは、そう一言だけ言って 車に乗り込むために、 再び歩き始めた。 「待てって」 なのに、矢野くんは あたしの腕を掴んで 動きを静止させる。 「…何、」 「くれって言っただろ」 捕まれる手の温もりは、 あの日と変わらない。