「何でここのメニューって、値段ないんですか?」
聞いたことがまずかったのか、
店員さんは少し顔を
歪めて答えてくれた。
「当店はご予約いただきますとこちらのお座敷になっていまして、お客様の要望で値段の書いていないメニューを置かせていただいております」
店員さんは続けてこう言った。
「男性からの要望が強く、お連れ様が値段を気にしてしまうとのお声がありまして、このようなシステムにさせていただいております」
「あ、分かりました。ありがとうございます」
店員さんは、失礼しますと
深々頭を下げて出て行った。
矢野くんは、あたしのために
予約をしてくれたのだろうか。
値段を気にすると思って、
こんなシステムに
してくれたのだろうか。
「んだよ、まだ食ってなかったのかよ」
「待ってたの」
トイレから帰ってきた矢野くんに
あたしは何もなかったように
笑って接する。


