そして矢野くんは、
黙って出て行った。
あたしも何も言わなかった。
言えなかった、って言うのが
正しいのかな。
ただ、この場所にいることとか、
矢野くんが座っていたイスが
あたしの方に向いている
こととか。
全部が全部、嫌だった。
矢野くんがあたしのために
パフェを作ってくれた。
あたしがグラウンドに
いないことを気付いてくれてた。
すごくすごく嬉しくて。
今にも飛び上がりそうだった。
だけど、今は。
「上手くいかないなぁ…」
溜息と少しの涙が
零れ落ちるだけ。
さっきまで傍にいた
彼は、彼の好きな人の元へ
行ってしまった。
あたしをこんな所に
置き去りにして。
彼は戻ってしまった。
あたしの夢のような時間は、
本当に夢のように
終わってしまった。
あたしはただの、
情けのない人だ。


