離したくないな…。 そんな感情を抱きながら、俺は彼女を抱きしめる腕を緩めた。 ようやく自由になった桜ちゃんは目元に残っていた涙を拭い、頭を下げて来た。 「母を助けてくれて、ありがとうございます。何かお礼を…」 急に畏まられると、調子が狂うな…。 でも、人に感謝されるのは悪い気分じゃない。 「お礼なんて良いよ」 「でも…」 桜ちゃんはどうしても、お礼をしないと気が済まないらしい。