翌日の晩。 私は待ち合わせ場所である朝霧という宿に来ていた。 宿内に入ると、話を聞いていたのか、仲居さんが部屋まで案内してくれる。 「此処です」 人目につかない二階の一番奥の部屋。 仲居さんは静かにその場から去って行った。 私は襖の前に立ち尽くし、戸に手をかけた。 でも、開ける勇気が出ない。 もし、彼が此処にいなかったら? そんな考えが頭によぎっていた。 それでも、私はゆっくり襖を開けた。