「清良?」
ぼーっとしていたあたしの目の前で、太一が手をひらひら振った。
「あー、あのさ……
そのへんって、【あの村】に結構、近いなーって思って……」
あたしは下手ないいわけをした。
「あの村……岡崎一族の?
近くないよ。方向は一緒だけど」
「あ、そうだっけ?
何も噂は聞かなかった?」
太一は静かにうなずいた。
仕事で各地を回るたび、太一は瑛の消息を探っていた。
けど、彼等一族の詳細は、誰も知らなかった。
もともと、謎の一族だし。
「ダメだね。
あの人たちは、結構上の政治家や金持ちばっかり、相手にしてたから。
俺の依頼人とは、フィールドが違うみたい」
太一に依頼をよこすのは、普通の企業や個人だ。
あたしは席を立ち、インスタントコーヒーを二人分、いれた。
それをすすりながら、太一はぽろりとこぼした。
「でも……姉ちゃんのためには、見つからない方がいいのかもな……」
「……え?」
太一の言葉が一瞬信じられなくて、思わずカップを落としそうになる。
「だって……さ。
もう、6年も前の話だよ?
あいつだって……彼女とかいるんじゃね?」
「そ、それはまりあだって、そうじゃん。
寂しければ、しょうがないことだよ」
「けど、姉ちゃんより好きな人が出来たり、
結婚してる可能性だって、あるわけだろ?」



