Thanks for XX【六花の翼・番外編】



「そんなこと……ないで?」


「そうか……お前がそう感じてないなら、それでいい」



瑛は椅子から腰を上げた。


そろそろ戻ろうという意味らしい。


風に吹かれた黒い髪は、今でも銀色の光を中に隠していた。



「俺は……」



こちらを見ないまま、瑛は続ける。



「孤独が何より、恐ろしかったから……

自分でそれを選んでおきながら。

忍でいる限り、孤独から解放されることはないと思っていた。

家族を分断した、力というものが憎かった」


「…………」


「力を持つ限り、

自分が普通でない限り、

周りを巻き込む恐怖がつきまとう。

愛する者なら、なおのことだ」


「僕は、」


「諦め続けるのは、辛くないか」