蝉しぐれが聞こえる。
(カズのナレーション)「そうあれは暑い真夏の信州だった」

蝉しぐれがずっと聞こえている。
突然、車の爆音。加速、シフトダウンのギアの音。
タイヤのきしむ音。再び加速、ギアの音。

(ヒデ)「おっとっとっと」
(カズ)「まだヘアピンが続くぞ」

タイヤのきしむ音。
(アキ)「キャー!」
(トラ)「吐きそう」

車の加速、シフトダウンのギア。
タイヤのきしみ。再び加速。
ターボでトップに入る。

(カズ)「これで終わりだ。後は白樺湖まで一直線」
(トラ)「あー、疲れた」
(ヒデ)「白樺湖は通過して、女神湖まで行くんだろう?」
(カズ)「ああ、そうだ」

こころよいターボの音が続いている。
(アキ)「女神湖、姫ヶ淵を探しに」
(ヒデ)「姫ヶ淵にはUFOの基地がある」

シフトダウンのギアの音。
加速の爆音。

(カズ)「ここからまた坂道だ」
(トラ)「ふう」
(アキ)「トラ、大丈夫?」
(トラ)「あー、大丈夫」
(ヒデ)「カズ、ゆっくりと走ってくれ」
(カズ)「あいよ」

こころよいターボの音が続く。
(アキ)「姫ヶ淵には昔から伝説があるのよ」
(ヒデ)「ほう、どんな?」

タイヤのきしむ音。

(アキ)「戦国の頃、諏訪城のお姫様が、武田の
荒武者に追いつめられて、恋仲の若者と二人で
飛び込んだのが姫ヶ淵」

(ヒデ)「そうだったのか」