「あっ、ちょっと待ってよ!!」
「え…?」
足が止まった。
「ねぇ、これ食べていいよ!!」
女の子が手を置いたのはまだ新しいフルーツの
盛り合わせだった。
きっと誰かがお見舞いに
来たときにもらったのだろう。
「ゆっくりしていって!!お願い!」
「あの…でもなぁ…」
「ジュースの方が良い?持ってきてもらおうか?」
女の子がナースコールを押そうとしていた。
「ちょっと待って!君…」
蓮が声をあげた。
「俺達みたいなのがいたら家の人間がビックリするだろ?」
さすが蓮。親を出すとは冷製な判断だ。
すると…女の子は少し寂しそうな顔をした。
「うちの人なんかいないもん…。」
「えっ…?」
蓮…言っちゃいけないこと言っちまったな…。
「お母さん死んじゃった。お父さんは私を育てられずに捨てたの…。」
「はぁ。」
「さびしいんだ…私。」