あたしは怖くなって、急いで靴を履き替えて駆け出した。
怖い怖い怖い。
あたしの中で恐怖だけが占めていく。
あたしは何かから逃げるように走った。
追われてるわけじゃない。
でも、なぜか逃げないといけないような気がしたのだ。
見られているわけではないのに、じっと誰かに見られているような気さえした。
走って走って走って。
あの角を曲がれば家まで後少しだ、というところで何かとぶつかった。
ぶつかった衝撃であたしは思わず尻もちをつく。
今まで走っていたせいか息が切れ、すぐには立ち上がれない。
呼吸を整えながら顔を上げると、腹部を押さえながら
「イテテ……」
とうめく男がいた。



