「……かった」


「え?」


「お前が助かってよかった。お前が連れて行かれたとき、マジで焦ったんだからな」


悠が複雑そうに言ったもんだから、あたしは何も言えなくなってしまった。


ザザーと遠くで波の音が聞こえた。


空は、紅く染まっていた。


もうすぐ、日が沈むだろう。


雪もきっと心配しているはずだ。


戻ろっか


そう言おうと悠を見ると、あたしを抱きしめる悠の腕に力が込められた。


不思議に思って悠を見つめていると、悠が口を開いた。