隣の彼女は・・・

土曜日の朝―――

「せっかくの休みにさみしい女だなあ。」


予備校の廊下。

携帯で神崎先生が話していた。

どうやら相手は、さくららしい。

神崎先生の口調からすぐに分かった。



自分の姉に『さみいし女』とかって

普通言うか?



「あれ・・・切りやがった。」


切られて当然の言い方だよな~。


陰から見てて電話の向こうのさくらに同情してしまう。



携帯の画面を見ながらブツクサ言って

神崎先生はまた掛け直した。



「さくら様~、お願いが・・・
ソファーに置いてあるカバン忘れちゃってさ~。」


今度は甘えモードかよ。


カバン忘れたとか言ってるし。



神崎先生って・・・忘れ物多くねえ?



「それ、持って来てよ。」


またですか?


多分、電話の向こうのさくらも同じこと思ってる。


カバンってあれだよな、仕事(バイト)道具一式入ってるやつだろ?

忘れるか普通?


「さくら様~お願い助けて。」


自分のさくらに対する仕打ちを忘れてやしないかあ?

行かないって言ってやれ!と思う。


「いいよ。さくらは化粧なんかしなくったって綺麗だよ。」


どうやらさくらが来ることを承知したようだった。



神崎先生は、さくらの気分をよくするようなこと言って・・


と思ったら



「これだけ言えば大丈夫だよね。じゃ~ね」


と最後に余計なこと言って携帯を切った。

って・・・

ありえね~。


何?今の?



さくら持って来なくていいぞ!


そう言ってやりたい気分になった。