井口さんは、つい1か月前まで病院にいたそうだ。
それが、おばあさんたっての希望で自宅退院したんだそうだ。
生活感が溢れる畳の部屋に大きなベッド。
タオルに埋もれるみたいに横たわっている患者さん。
院長先生が来るのを楽しみにしていた、なんて、どうやってわかる?
動くのは右手だけ。
話すこともできないのだという。
骨と皮みたいに痩せているけど、身長はありそうだし、関節は固まっている。
そんな患者さんを、腰の曲がったおばあさんが介護しているなんて…。
唖然とするオレの前で、院長先生は床ずれの処置をし始めていた。
「道重先生、ガーゼ」
「…あ、はい」
目の当たりにした介護の現場。
病院なら24時間スタッフが交代で看護してくれて、必要な時には医者がかけつける。
環境が違いすぎる。
ガーゼをさばきながら、おばあさんの様子をうかがうと、ニコニコしている。
なぜか幸せそうなんだ。
「無理言って家に帰してもらって、先生は神様みたいなもんだよ」
おばあさんは言った。
「おじいさんもそう思うでしょ?」
決して高度な医療はできない。
それでも、幸せはここにある。
それが、おばあさんたっての希望で自宅退院したんだそうだ。
生活感が溢れる畳の部屋に大きなベッド。
タオルに埋もれるみたいに横たわっている患者さん。
院長先生が来るのを楽しみにしていた、なんて、どうやってわかる?
動くのは右手だけ。
話すこともできないのだという。
骨と皮みたいに痩せているけど、身長はありそうだし、関節は固まっている。
そんな患者さんを、腰の曲がったおばあさんが介護しているなんて…。
唖然とするオレの前で、院長先生は床ずれの処置をし始めていた。
「道重先生、ガーゼ」
「…あ、はい」
目の当たりにした介護の現場。
病院なら24時間スタッフが交代で看護してくれて、必要な時には医者がかけつける。
環境が違いすぎる。
ガーゼをさばきながら、おばあさんの様子をうかがうと、ニコニコしている。
なぜか幸せそうなんだ。
「無理言って家に帰してもらって、先生は神様みたいなもんだよ」
おばあさんは言った。
「おじいさんもそう思うでしょ?」
決して高度な医療はできない。
それでも、幸せはここにある。