偽物の国のアリス



少年の被っていた仮面の耳が、少年の気持ちに比例して垂れ下がった。


『・・・いいよ。私も、もう思い出そうとしないから』


ゆるゆると力なく笑う。


すると少年も笑った。


少年は立ち上がって私に手を差し出す。


その手を取って、私も立ち上がった。


「僕は白兎。気軽に白兎って呼んでね」


『白兎?変わった名前だね』


ぽろりと漏れた本音に白兎は苦笑いを零した。


「あはは・・・。まぁ、本名じゃないしね」


『?そうなの?じゃあ貴方の本名は?』


「知らない」


白兎はキツめにきっぱりと言い放った。


表情は分からないけど、口はへの字に曲がり、なにより雰囲気ががらりと変わった。


触れてはいけない領域だったのかもしれない。


私は話を変えるため、自分の自己紹介をしようと口を開いた。


『わっ私は、』


そこまで言って、またさっきの頭痛が私を襲った。