「あ、アリスですって?ごめんなさい・・・あたしってば」
しょんぼりと眉をハの字に下げた女王様は可愛らしいけど、そんな顔をさせてしまってなんだか私が申し訳ない気持ちになった。
『いや、いいですよ。別に怪我とかした訳じゃないし』
未遂ですもん、とにっこりと微笑みながらいうと、女王様もつられて笑った。
「優しいのね、アリスは。”彼”が貴方を想うのも分かるわ」
『え?』
彼?誰のことだろう。
「ごほんっ」
「・・・うふふ。何でもないわ。そう言えばアリス、折角このあたしに会いにきてくれたんですもの。一緒に遊びましょう?」
白兎がわざとらしく意味ありげな咳払いをして、女王様を睨みつけた。
真っ赤なドレスの裾を持ち上げて、にこにこと純粋な笑顔を向けながら歩み寄る。
遊ぶ、なんて、女王様もやっぱり見た目通り子供のところがあるんだ。
『いいですよ。何します?』
「うーん。・・・じゃあ、アリスの着せ替え人形ごっこをしましょう!」
『え?着せ替え人形ですか?』
「えぇ、今の服よりもっと可愛いのを用意してあげるわ」
女王様はちょいちょいと学校の制服を引っ張った。
「でもその前にお風呂に入りましょう。疲れたでしょう?」
えぇまあ、白兎に無理矢理走らされましたから、とは言えず顔を引きつらせて笑う。
「はぁ、じゃあメアリ・アンに準備しておくように言っておきます」
「えぇ、よろしくね」
白兎を女王様の部屋に置いて、私たちはお風呂場に向かった。


