「延さん!聞いてます?寒くないんですか!?」


「さむい」


(だって冬だもの。寒いに決まってる)


「早く帰りましょう?」


(そうだ。早く帰らなきゃ……)


 でも,足が動かない。

 殆ど無意識に突っ立っていた。


「布団。あぁ,そう。布団で寝たい」


 うまく言葉が見つからない。

 頭は思考回路と言う回路が捩じれて,訳が分らない。

 一端,止めてしまいたい。

 寝たい。


「だから,帰りましょう」


 隆也は少しだけ困惑している様子だった。


 じんわりと暖かみのある手に引かれて,延はようやくそれが隆也本人であることに気付いた。