布団干し棒で布団を叩くような音と共に,美形の同居者は布団に変ってしまっていた。


「……あぁ!もう!……本当に手の掛かる……」


「済みません……学校で我慢していたのが……一気に緩んでしまって……」


 布団は申し訳なさそうに二つ折りになりながら言った。


 延は責任を感じてか,その掛け布団を畳んで持ち上げた。


(こういうのって……普通,逆よね……別に私がおぶさりたい訳じゃないけど。……何だかなぁ……)



「どうせなら,布団になっても移動できるようにしなさいよ……」


「済みません……」


シクシクと哀しげに隆也は謝る。


「……泣きたいのはこっちなのに……不公平だわ」


「す,すみませ……」


 何を言っても「すみません」とか「ごめんなさい」とか謝り通しの隆也に,延は怒る気にもなれなかった。


 延は複雑な気持ちと柔らかい肌慣れたガーゼの掛け布団を背負って帰った。




 その様子を見ていた人影にも気付かずに……。