篠さんが、私の向かいのソファに腰をかける。
 さすが自分の陣地らしく、少しリラックスしているようだ。
 両膝を大きく広げて、後ろに体重をかける。

「……篠さん、チャック開いてますけどそれはいいんですか?」
「おうっ」

 篠さんは慌てて自分の股間を確認し、素早くチャックを上げる。

「しかもパンツ、ピンクでしたね」

「い、いやらしいな。なぎさんは」

「見たくて見たわけじゃないですよ! 黒とかグレーのパンツだったら気付かないですんだかもしれないのに、なんでよりによって鮮やかなピンクなんですか」

「パンツの色や形の選択は、俺の自由だろう」

 いい大人二人が、パンツパンツ言い合いながら言い争っている。

 冷静になると、極めてバカバカしいということに篠さんも気づいたようで、わざとらしく咳払いをし、そして口を開いた。