「え?」

「笑顔、いつもよりちょっと優しい感じです。」


そう指摘されて頬に触れると、どうやらその言葉は間違っていないらしい。
頬が緩んでいる。


「…そうみたい。なんか安心しちゃって。
小夏の涙、いっぱい見てきたし…悩んでいるのも知っていたから。」


だから今、あの子がああして隣に居たいと思う人の一番近くで笑っていることに安心する。
〝良かったね〟と心から言える。


「自覚しているよりも嬉しいのかもしれない。私も。」


そう言って風馬を見ると、なんだか表情が芳しくない。


「…な、なに?
そんな顔されるような話?」


ぶすくれた、と言えばいいのか…ただ単に小さな子どもが拗ねているだけに見えるというか…。


「何か文句があるなら言いなさいよ。」

「…文句じゃないですけど。
妬けるなぁー…って。」

「やける?何が?」

「…夏海さんの頭の中で正しく変換できていますかね?
ヤキモチを妬く、の〝やく〟ですよ?」

「は?ヤキモチ?何が?誰がよ?」

「…俺が、小夏ちゃんに、ですよ。」

「…ごめん、全然意味が分からない。」

「ちょっとこっち来てください。」

「…?」


話が進まなそうなので私もソファーに座る。
少し距離を取ったらダメ出しされたので、肩が触れるような距離に座り直す。