Secret Lover's Night 【連載版】

「ほんまに千彩の父親やったとして、今まで吉村さんはどこで何してはったんですか?貴方がいつから居らんかったんかは知りませんけど、その間に千彩に何があったか知ってはるんですか?」
「そうや!何してたんですか子供放ったらかして!ちーちゃん可哀相に変な店で働かされて…っ」

そこまで言い、恵介はハッと口を噤む。一瞬にして吉村の顔つきが変わったのが見えたのだ。それは何も恵介だけではなくて。今まで穏やかに会話をしていたメーシー然り、責め立てていた晴人然り。

それぞれが息を呑み、一瞬にしてその場に緊張が走った。


「それ…ほんまですか?」


地の底を這うような低い声に、恵介は黙ってコクリと頷く。


「あいつら…ちょっと俺が居らん思うてナメた真似しよって。大事な娘傷もんにしやがって…ただで済むと思うなよぉ」


わなわなと両手を震わせる吉村に声を掛けたのは、意外にも三人の中で一番臆病だろう恵介だった。


「もしかして、あのー…お父さんやなくて、お兄様…ですか?」


その言葉に、晴人はハッと我に返る。それは吉村も同じで。完全に据わっていた目をきょとりと元に戻すと、吉村は期待に目を輝かせた。

「千彩のこと、話してくれはりますか?何やったら会わせてくれても…」
「お兄…様…」
「そうです、そうです!」
「ほな、父親ちゃいますやん」
「いや…まぁ、そうなんですけどね。実の父親やないですけど、そんなようなもんですよ?」
「それは…」


「だって、死んだあの子の母親、俺の女やったんですから。女より俺の方が千彩のこと可愛がってましたし」


死んだ。と聞こえた、晴人には。

チラリと恵介を見遣ると、複雑そうな表情をして固まっている。それを見て、余計にどうしていいかわからなくて。

いつもは冷静な晴人も、千彩のこととのなると冷静さを欠いて、途端に頭の回転が鈍くなってしまう。