「本気ってこと?」
「何が?」
「姫のこと」
ズバリと核心をつかれ、思わず飲みかけた水を喉に詰まらせた。ゲホゲホと苦しそうに噎せる晴人の背を摩りながら、恵介が笑う。
「ははっ。何焦ってんの?らしくない」
「いやっ…だって…な」
「遊びだったら、俺は王子に幻滅するかな。ああゆう子、玩ぶもんじゃないよ?」
「いや、遊びとか、玩ぶとか…そうゆうんやなくてやな」
「なくて?」
「いや…、何て言うか…」
助けを求めようとチラリと恵介を見遣るも、助けてくれるはずの恵介までもニヤニヤと嫌な笑みを見せていて。勘弁してくれ…と、額に手を乗せて薄暗い天井を見上げた。
「所長も喜んでたよ?これで王子が落ち着くんじゃないかって」
「はぁ…」
「でもさ、ああゆう「いかにも純粋です!」って子は、軽い王子にはちょっと扱い難いかもね。ケイ坊もそう思うだろ?」
「いやぁ…どうやろ。でも晴人、高校時代は何人かああゆう子と付き合うてたよな?」
「せやったっけ?忘れたわ、そんな昔のこと」
一応思い出そうとはしてみたものの、見事に顔も名前も出てこなくて。初めての恋人の顔はきっちりと思い出せるのに、間がどうにも曖昧な記憶ばかりだった。
「ヤダねー、汚れた大人」
「よぉ言うわ。自分かてそうやろ?」
「いやいや。俺はちゃんと覚えてるよ?王子みたいに薄情じゃないし」
「はいはい。そりゃ悪ぅございました」
ガシガシと頭を掻き、もうどうにでもしてくれ…と、投げ遣りになってくる。それを引き留めるように、メーシーが真面目な顔を作ってみせた。
「大事にしてやんなよ?好きなんだったら」
「好き…なぁ」
「俺や所長の目からは、王子が姫に惚れ込んでるように見えたけど?あっ、ケイ坊も?」
「まぁ…俺にもそう見えんことは…ないけど」
「何や、揃いも揃って…」
惚れるとか惚れないとか、ここ何年もそんなことを考えたことが無かった。恋愛はしていたつもりだったけれど、それもどこか冷めた目で見ている自分がいて。
本気で相手を好きになるとか、惚れ込むとか、そんな面倒くさいこと…と、どこか避けていた節がある。
「いいねー、恋。俺もしたいなー」
はははっ。と笑うメーシーに釣られ、恵介も笑いを零している。それが何だか心地好くて。胸につかえた何かがスッと消え去った気がした。
「何が?」
「姫のこと」
ズバリと核心をつかれ、思わず飲みかけた水を喉に詰まらせた。ゲホゲホと苦しそうに噎せる晴人の背を摩りながら、恵介が笑う。
「ははっ。何焦ってんの?らしくない」
「いやっ…だって…な」
「遊びだったら、俺は王子に幻滅するかな。ああゆう子、玩ぶもんじゃないよ?」
「いや、遊びとか、玩ぶとか…そうゆうんやなくてやな」
「なくて?」
「いや…、何て言うか…」
助けを求めようとチラリと恵介を見遣るも、助けてくれるはずの恵介までもニヤニヤと嫌な笑みを見せていて。勘弁してくれ…と、額に手を乗せて薄暗い天井を見上げた。
「所長も喜んでたよ?これで王子が落ち着くんじゃないかって」
「はぁ…」
「でもさ、ああゆう「いかにも純粋です!」って子は、軽い王子にはちょっと扱い難いかもね。ケイ坊もそう思うだろ?」
「いやぁ…どうやろ。でも晴人、高校時代は何人かああゆう子と付き合うてたよな?」
「せやったっけ?忘れたわ、そんな昔のこと」
一応思い出そうとはしてみたものの、見事に顔も名前も出てこなくて。初めての恋人の顔はきっちりと思い出せるのに、間がどうにも曖昧な記憶ばかりだった。
「ヤダねー、汚れた大人」
「よぉ言うわ。自分かてそうやろ?」
「いやいや。俺はちゃんと覚えてるよ?王子みたいに薄情じゃないし」
「はいはい。そりゃ悪ぅございました」
ガシガシと頭を掻き、もうどうにでもしてくれ…と、投げ遣りになってくる。それを引き留めるように、メーシーが真面目な顔を作ってみせた。
「大事にしてやんなよ?好きなんだったら」
「好き…なぁ」
「俺や所長の目からは、王子が姫に惚れ込んでるように見えたけど?あっ、ケイ坊も?」
「まぁ…俺にもそう見えんことは…ないけど」
「何や、揃いも揃って…」
惚れるとか惚れないとか、ここ何年もそんなことを考えたことが無かった。恋愛はしていたつもりだったけれど、それもどこか冷めた目で見ている自分がいて。
本気で相手を好きになるとか、惚れ込むとか、そんな面倒くさいこと…と、どこか避けていた節がある。
「いいねー、恋。俺もしたいなー」
はははっ。と笑うメーシーに釣られ、恵介も笑いを零している。それが何だか心地好くて。胸につかえた何かがスッと消え去った気がした。

