Secret Lover's Night 【連載版】

三木家の兄弟ゲンカに、晴人と千彩とのこと。それは取り敢えず治まった。けれど、解決していない問題が一つ残っている。

「謝れよ、クソガキ」
「嫌なこった」

悠真がベッと舌を出せば、再びカーンッとゴングが響く。ぎゃーぎゃーと言い争う大人だか子供だかわからない二人を見上げながら、すっかり落ち着いた四人は冷えたコーヒーで静かに喉を潤していた。

「どっちが勝つと思う?」
「そりゃメーシーやろ」
「俺は悠真やと思うな」
「は?相手メーシーやで」

自分でもメーシーと口論をして勝つ自信は無い。だから単純おバカな悠真には無理だ。そう言い切る晴人を、恵介は鼻で笑った。

「喧しいなぁ。千彩が起きてまうわ」
「大丈夫やって、智人。もう片付くから」

ふふっとメーシーを真似て笑う恵介に晴人が怪訝な顔をしていると、突然扉が開かれ女王様が姿を現した。しかも女王様は、かなりご立腹のご様子だ。

あぁ、だからか。一歩遅れて悟った晴人もまた、メーシーを真似てふふっと笑った。

「shut up!煩くて眠れやしないわ!いい加減にしなさいよ、バカ男共!」

パシンッ!パシンッ!と頭を叩かれ、くだらない言い争いをピタリと止めた二人。先に謝罪の言葉を紡いだのは、言うまでもなくメーシーだ。

「ごめんね、麻理子。起こしちゃった?」
「起こしちゃった?じゃないわよ。煩くて眠れないって言ってんの!」
「ごめん。怒ると胎教に悪いから落ち着いて」
「怒らせたのは誰よ」
「俺だね。ごめん。さぁ、もう大丈夫だから休もう」
「まったく…」

ぶぅっと頬を膨らせるマリの背をそっと押しながら、メーシーはあっさりその場を引いた。さすが女王様。残された男四人の思いは同じだ。

「さすがマリ女王」
「メーシーもマリちゃんの前じゃあれやもんなー」
「何なんあれ。カッコ悪っ」
「まぁ、そんなもんやって」

去って行く背中にベッと再び舌を出す悠真を、晴人が「まぁ、座れ」と促す。ソファの端ながらも晴人の隣を確保した悠真は、つい数秒前とはうって変わってご機嫌だ。

そんな悠真の様子に、今度は智人がため息混じりの抗議をした。