「ちーちゃんさぁ、ほんまは片付け大嫌いやねん。でもせんと智人が怒るから、いっつもぶーぶー言いながらしよったわ」
「そうなん?毎日ちゃんと綺麗に片付けとるで」
「キッチンもな、ばーっと調味料並んでるやん?おばちゃん出したままにしとるやん?覚えてる?」
「あぁ…せやったな」
「あれが気に入っとってな。せやけど智人はそれが嫌いやから、片付けんかー!って毎日ケンカやで。ガキみたいやろ」
何を和んでやがる。そんなメーシーの視線に気付いても、悠真は言葉を止めようとはしなかった。
「ほら、あっこにぬいぐるみ置きっ放しやん。連れて回るんええんやけど、結局どっかに置きっ放しにして寝る時騒ぐねん。プリン君がおらんー!って」
「そういや…」
「あれな、にーちゃんに買うてもろたって言うとった。欲しいって言わんでもわかってくれたって嬉しそうに言うとったわ」
「そういやちーちゃん物欲無いよな」
「一緒に買い物行ったら、あれもこれもって言いよるで?まぁ、ぜーんぶ例のヒーローやったし、安いもんなんやけどなー」
「あぁ…好きやなぁ、これ」
悠真に代わって洗い物を始めた恵介は、今まさにそのヒーローを泡まみれにしている最中だ。サッと水で流し、汚れの落ちたヒーローがドヤ顔を覗かせた。
「ちーちゃんにとってのヒーローは、吉村さんと、にーちゃんと、智人。もっと大人になったら、恩返しするんやって言うとった」
名を並べた順にカップを置き、悠真は何食わぬ顔でその緊張感の中に入り込んだ。相変わらず空気読まん奴やな。と、恵介にまで思われてしまう始末。けれど、読めるメーシーは違った。
「何が言いたいのかな、君は」
言いたいことがあるなら遠慮せずにどうぞ。そう言って笑顔を作るメーシーを見上げ、怖いもの知らずの悠真は笑う。
「目ぇが笑うてへん」
「ん?」
「奥さんが言うてました。あの人は怒ったら怖いから気を付けろって」
「あぁ…別に怒ってないんだけどね」
「ほな、この威圧感漂う空気は?ピリピリしとんのはこの兄弟のせいだけですか?」
「おっ…おい、悠真。やめとけって」
そこに噛み付かれては、後々自分達が被害を被る。それはいただけない。いや、いただけないどころか全力で阻止したい。そう思う恵介は、慌てて濡れた手をタオルで拭いてリビングへ戻った。
「ちーちゃん、にーちゃんから電話かかってきたら嬉しそうにしとった。その日はな、不思議と夜中に調子悪くならへんねん。にーちゃん効果って絶大なんやろなーって、俺思いよったんやけど」
あぁ、このままだと今度は悠真がキレる。早く何とかしなければ。
そう思って何とか自分を急かすのだけれど、智人の思考はぐちゃぐちゃしたまま一向に纏まる気配を見せない。
何とかしなければ。そう思えば思うほど、これ以上何が出来るのだろうか…と道が塞がれる。
「そうなん?毎日ちゃんと綺麗に片付けとるで」
「キッチンもな、ばーっと調味料並んでるやん?おばちゃん出したままにしとるやん?覚えてる?」
「あぁ…せやったな」
「あれが気に入っとってな。せやけど智人はそれが嫌いやから、片付けんかー!って毎日ケンカやで。ガキみたいやろ」
何を和んでやがる。そんなメーシーの視線に気付いても、悠真は言葉を止めようとはしなかった。
「ほら、あっこにぬいぐるみ置きっ放しやん。連れて回るんええんやけど、結局どっかに置きっ放しにして寝る時騒ぐねん。プリン君がおらんー!って」
「そういや…」
「あれな、にーちゃんに買うてもろたって言うとった。欲しいって言わんでもわかってくれたって嬉しそうに言うとったわ」
「そういやちーちゃん物欲無いよな」
「一緒に買い物行ったら、あれもこれもって言いよるで?まぁ、ぜーんぶ例のヒーローやったし、安いもんなんやけどなー」
「あぁ…好きやなぁ、これ」
悠真に代わって洗い物を始めた恵介は、今まさにそのヒーローを泡まみれにしている最中だ。サッと水で流し、汚れの落ちたヒーローがドヤ顔を覗かせた。
「ちーちゃんにとってのヒーローは、吉村さんと、にーちゃんと、智人。もっと大人になったら、恩返しするんやって言うとった」
名を並べた順にカップを置き、悠真は何食わぬ顔でその緊張感の中に入り込んだ。相変わらず空気読まん奴やな。と、恵介にまで思われてしまう始末。けれど、読めるメーシーは違った。
「何が言いたいのかな、君は」
言いたいことがあるなら遠慮せずにどうぞ。そう言って笑顔を作るメーシーを見上げ、怖いもの知らずの悠真は笑う。
「目ぇが笑うてへん」
「ん?」
「奥さんが言うてました。あの人は怒ったら怖いから気を付けろって」
「あぁ…別に怒ってないんだけどね」
「ほな、この威圧感漂う空気は?ピリピリしとんのはこの兄弟のせいだけですか?」
「おっ…おい、悠真。やめとけって」
そこに噛み付かれては、後々自分達が被害を被る。それはいただけない。いや、いただけないどころか全力で阻止したい。そう思う恵介は、慌てて濡れた手をタオルで拭いてリビングへ戻った。
「ちーちゃん、にーちゃんから電話かかってきたら嬉しそうにしとった。その日はな、不思議と夜中に調子悪くならへんねん。にーちゃん効果って絶大なんやろなーって、俺思いよったんやけど」
あぁ、このままだと今度は悠真がキレる。早く何とかしなければ。
そう思って何とか自分を急かすのだけれど、智人の思考はぐちゃぐちゃしたまま一向に纏まる気配を見せない。
何とかしなければ。そう思えば思うほど、これ以上何が出来るのだろうか…と道が塞がれる。

