Secret Lover's Night 【連載版】

「けーちゃん、お姫様がパンツやと」
「はいはい。こっちにあるで。服はどれがいい?」
「何でもいい」
「遠慮せんと。さ、さ」

選びたい放題とは正にこのことだろう。L字型のソファに並べられた、服、服、服。その全てが、もう既に恵介の手によってコーディネートされていて。

さすがトップスタイリストと呼ばれるだけある。と、小さく感嘆の息を漏らせば、それに気付いた恵介がこれでもか!と上体を反らせて胸を張っていた。

「はぁ…」
「何やそのため息!褒めろって、俺を!」
「わかった、わかった。ケーチャンスゴイネー」
「うわっ!めっちゃムカつく!」

学生時代からの友人というものは、いくつになってもこんな調子でじゃれ合える。特に、男同士の場合は。けれど、全ての人間がそれを理解出来るわけではないのだ。


「何でケンカしてるの?ちさのせい?ごめんなさい…」


いがみ合う二人の間で、二人の顔を見比べながら狼狽える千彩。その様子に、動きが止まってしまう男二人。

暫しの沈黙の後、恵介が叫んだ。

「マイエンジェール!」
「わっ」
「こらっ!やめんか恵介!」

何の遠慮も無く緩みきった表情を晒し、不安げに見上げる千彩を力一杯抱き締める。そして、服を好き放題に広げていたソファへそのまま一緒に沈み込んだ。

腕の中の千彩が、嬉しそうにきゃーきゃーとはしゃいでいる。それを見下ろしている晴人の表情も、自然と緩むと言うもので。

再び賑やかな時間が動き出した。