「別れるの?」
ただ一言だけ口に出し、そこに込められた思いを悟れと晴人を見据える。こんな時のメーシーの目は、決して直視したくない。そう思い、晴人は視線を逸らしたまま小さく頷いた。
「随分勝手だね。散々俺達巻き込んで付き合ってきたくせに」
「…せやな」
「どうして拾って来たのさ」
「どうしてって…」
「理由、聞いてなかったなーと思って」
声を荒げることも、言葉を乱暴にすることもない。淡々と言葉の網で晴人を捕らえようとするメーシーは、にっこりと笑っていた。
この状態のメーシーが完全にキレた状態だということを、肩を抱かれたマリはよく知っている。これはもうダメだ。と、自分は決して口を挟まないと決め、マリにしては珍しく遠慮気味に言葉を押し出した。
「ねっ…ねぇ、めいじ」
「ん?どうしたの?麻理子」
「あた…アタシ、少し疲れたからbed roomでprincessと一緒に休んできてもいい?」
「そうだね。そうしておいで」
にっこりと作られたメーシーの笑顔は、それはそれは恐ろしくて。身震いしながらゆっくりと腕の中を抜け、マリはそそくさとベッドルームへと向かった。
あそこは危ない。悪魔が降りて来た。そう本能が告げる。
「あれっ?マリさん」
突然の来訪者に、驚いたのは悠真だ。千彩の手をギュッと握り大きなベッドに腰掛ける悠真に、マリは緩く首を振ってリビングでの争いを伝えた。
「晴が、別れるって言い出したの。自分では幸せにしてやれないって。それでモメ始めて、危険だから逃げてきたのよ。そこ、譲ってもらえるかしら?」
「あぁ…どうりで騒がしいわけや」
スッと身を引き、悠真はマリにスペースを譲る。さて、俺はどうしようか。悩む時間はなさそうだった。
「参考までに聞きますけど、キレてんのは弟?父親?」
「どっちでもないわ」
「え?恵介君?」
「それもハズレ。アタシのhasbandよ」
温厚そうなのに、人は見かけによらないってやつか。と、メーシーの本性を知らない悠真は思う。それを察してか、マリは千彩の頭をゆっくりと撫でながら悠真を見上げた。
「行くなら気をつけなさいよ」
「何に?」
「あの人、怒ると怖いんだから」
「それはそれは。ご忠告どうも」
だったら自分が止めてやればいいのに。この二人の関係を知らない悠真は、そんなことを思いながらベッドルームを後にした。
時刻はもう深夜の域に入った。大人達の勝手な都合の押し付け合いが、これから始まろうとしている。
ただ一言だけ口に出し、そこに込められた思いを悟れと晴人を見据える。こんな時のメーシーの目は、決して直視したくない。そう思い、晴人は視線を逸らしたまま小さく頷いた。
「随分勝手だね。散々俺達巻き込んで付き合ってきたくせに」
「…せやな」
「どうして拾って来たのさ」
「どうしてって…」
「理由、聞いてなかったなーと思って」
声を荒げることも、言葉を乱暴にすることもない。淡々と言葉の網で晴人を捕らえようとするメーシーは、にっこりと笑っていた。
この状態のメーシーが完全にキレた状態だということを、肩を抱かれたマリはよく知っている。これはもうダメだ。と、自分は決して口を挟まないと決め、マリにしては珍しく遠慮気味に言葉を押し出した。
「ねっ…ねぇ、めいじ」
「ん?どうしたの?麻理子」
「あた…アタシ、少し疲れたからbed roomでprincessと一緒に休んできてもいい?」
「そうだね。そうしておいで」
にっこりと作られたメーシーの笑顔は、それはそれは恐ろしくて。身震いしながらゆっくりと腕の中を抜け、マリはそそくさとベッドルームへと向かった。
あそこは危ない。悪魔が降りて来た。そう本能が告げる。
「あれっ?マリさん」
突然の来訪者に、驚いたのは悠真だ。千彩の手をギュッと握り大きなベッドに腰掛ける悠真に、マリは緩く首を振ってリビングでの争いを伝えた。
「晴が、別れるって言い出したの。自分では幸せにしてやれないって。それでモメ始めて、危険だから逃げてきたのよ。そこ、譲ってもらえるかしら?」
「あぁ…どうりで騒がしいわけや」
スッと身を引き、悠真はマリにスペースを譲る。さて、俺はどうしようか。悩む時間はなさそうだった。
「参考までに聞きますけど、キレてんのは弟?父親?」
「どっちでもないわ」
「え?恵介君?」
「それもハズレ。アタシのhasbandよ」
温厚そうなのに、人は見かけによらないってやつか。と、メーシーの本性を知らない悠真は思う。それを察してか、マリは千彩の頭をゆっくりと撫でながら悠真を見上げた。
「行くなら気をつけなさいよ」
「何に?」
「あの人、怒ると怖いんだから」
「それはそれは。ご忠告どうも」
だったら自分が止めてやればいいのに。この二人の関係を知らない悠真は、そんなことを思いながらベッドルームを後にした。
時刻はもう深夜の域に入った。大人達の勝手な都合の押し付け合いが、これから始まろうとしている。

