Secret Lover's Night 【連載版】

「悠真、薬」
「はいはい」
「千彩、晴人に電話するか?」
「はる…お仕事?」
「もう終ってるやろ」
「…いい。心配する。はるがいなくなったら、けーちゃんもめーしーも…マリちゃんも困る。お仕事邪魔するのは…悪い子」
「悪い子でもええやろ」
「悪い子はほかされる。ちさ、いい子にする」

耐えきれなくなったのは、何も晴人だけではない。恵介も、メーシーも、マリまでもうっと口元を手で覆って目を伏せた。これが千彩の抱えるモノ。自分達がわかってやれなかった千彩の心の奥にある傷。そう思うと、とてもではないけれど直視することは出来なかった。

「ちー坊…ごめんな。おにーさまが悪かったな」

既に頬に涙を伝わせる吉村は、ゆっくりと千彩の元へと歩み寄りそっと頭を撫でる。震える背中に頬を寄せ、何度も謝罪の言葉を紡いだ。それが聞こえていないということも、受け取ってもらえないということも知って。

「はい、薬」
「おぉ。さんきゅ。千彩、薬」
「もう怖くない?」
「おぉ」
「いい子にしてたら、はる迎えに来る?」
「おぉ。これ飲んで寝て、起きたら晴人が迎えに来てるわ」
「もうちさのことほかさない?」
「おぉ。心配要らん」

優しく笑う智人に安心した千彩は、グイッとグラスの中身を飲み干して再び智人の腕の中で瞳を閉じた。

「悠真、運んで」
「えー」
「結構重いんやぞ、こいつ。俺はギターより重いもんは持てん」
「持っとったくせに」
「こんだけ騒いだらもう起きんわ。ベッド運んで」

わがままやなぁと言いながらも、悠真は言われた通りベッドルームへと千彩を運ぶ。

暫くそこで様子を見て、モメ始めたら仲裁に入ろう。そう決めて。