ドサッと何かが投げられた音と、ペタペタと聞こえる足音。それに続いて、普段聞くことのない千彩の叫び声が響く。
「イヤー!おにいさまー!」
呼ばれた吉村が慌てて千彩の元へ向かおうとするのを制し、智人ははぁっと大きく息を吐いて晴人を見据えた。
「ええ機会やからよぉ見とけ。あいつの抱えてるもんは、あんたらが思うほど小さなもんやない」
そう言って、智人はわざと席を立ってキッチンへ向かった。手を出すな。そうしっかりと低い声で言い残し、悠真に目配せをして下がらせる。
「おにーさま!ママ!どこ!?ちさを置いて行かないでー!」
力一杯扉を開けた千彩は、リビングに集まる仲間達には目もくれず、家中の扉を開いて電気を点け始めた。
「おにーさま!ママー!」
泣き叫ぶ千彩は、もう半狂乱状態で。声を掛けようにも、じっとキッチンから自分達を見据える智人の目がそれを許してくれそうにはなかった。
「悠真、やれ」
「いや、でも…」
「ええ加減お兄に現実見てもらわなな」
「でも…」
躊躇う悠真は、自分がそれをすることによって千彩がどんな状態になるのかをよく知っていた。そして、それを見た晴人が今以上に傷付くということも。だから躊躇う。けれど、智人はそれを急かす。
「悠真」
「…わかった」
「薬用意しとけ」
「…うん」
智人の指示を実行するため、悠真は大きく息を吸ってゆっくりと吐き出した。そして、マリの前に置かれていたグラスを誰も居ない方向へと力一杯投げ付けた。
「イヤー!おにいさまー!」
呼ばれた吉村が慌てて千彩の元へ向かおうとするのを制し、智人ははぁっと大きく息を吐いて晴人を見据えた。
「ええ機会やからよぉ見とけ。あいつの抱えてるもんは、あんたらが思うほど小さなもんやない」
そう言って、智人はわざと席を立ってキッチンへ向かった。手を出すな。そうしっかりと低い声で言い残し、悠真に目配せをして下がらせる。
「おにーさま!ママ!どこ!?ちさを置いて行かないでー!」
力一杯扉を開けた千彩は、リビングに集まる仲間達には目もくれず、家中の扉を開いて電気を点け始めた。
「おにーさま!ママー!」
泣き叫ぶ千彩は、もう半狂乱状態で。声を掛けようにも、じっとキッチンから自分達を見据える智人の目がそれを許してくれそうにはなかった。
「悠真、やれ」
「いや、でも…」
「ええ加減お兄に現実見てもらわなな」
「でも…」
躊躇う悠真は、自分がそれをすることによって千彩がどんな状態になるのかをよく知っていた。そして、それを見た晴人が今以上に傷付くということも。だから躊躇う。けれど、智人はそれを急かす。
「悠真」
「…わかった」
「薬用意しとけ」
「…うん」
智人の指示を実行するため、悠真は大きく息を吸ってゆっくりと吐き出した。そして、マリの前に置かれていたグラスを誰も居ない方向へと力一杯投げ付けた。

