ガラスの扉を押し開け、何名様ですか?と尋ねる店員を押し退け、智人は無言のまま最奥を目指す。後から入って来た吉村が店員に気を遣う始末で。あっこのツレなんです。とだけ告げ、吉村は苦笑いのまま智人の後を追った。
「あっ!ともと!」
ご機嫌にオムライスを頬張っていた千彩が、そんな不穏な空気に気付くはずもなくて。口の端にソースを付けたまま立ち上がった千彩は、悠真がそうしてくれたようにギュッと抱き締めてもらえるものだとばかり思っていた。何せ自分は、とても怖い思いをしたのだから。
パシンッ
けれどそれは、千彩の思い違いで。乾いた音と左頬に走る痛み。予想もしていなかった出来事に、千彩の目が丸くなる。
「あほかっ!何で約束守らんねん!俺がどんだけ心配したと思っとるんや!」
固まったままの千彩を抱き締め、智人は大声で訴える。その声は震えていて、今にも泣き出しそうだった。
「ちー坊」
「おにー…さま」
吉村の顔を見た途端、安心した千彩の目から一気に涙が溢れた。何で?どうして?そればかりがぐるぐると頭の中を回り、不安と恐怖が同時に押し寄せてくる。
「ちさ…怖かった」
「怖かった。ちゃうわ。俺の方が怖かったわ。何で約束破ってん、千彩」
震える千彩の頭を撫でながら、智人は涙声のままで。ここならば騒がない。そんな悠真の思いは、親友の手によって見事に打ち砕かれた。
「取り敢えず…座ろや。ここ、ファミレスやから」
遠慮気味に出した言葉も、完全に無視されてしまって。無理やりに肩を押して座らせ、トレー片手に固まっている店員にペコリと頭を下げた。
「すいません、騒がしくして。コーヒー二つお願いします」
「かしこ…まりました」
そそくさと逃げるように去って行く店員の背中を見送りながら、悠真はふぅっとため息を吐く。
こうなることは大方予想はついていた。だからこそここを選んだ。いつでも冷静に状況判断が出来る智人ならば、公衆の面前で騒いだりはしない。
問題は晴人だ。そう思っていた。
「あっ!ともと!」
ご機嫌にオムライスを頬張っていた千彩が、そんな不穏な空気に気付くはずもなくて。口の端にソースを付けたまま立ち上がった千彩は、悠真がそうしてくれたようにギュッと抱き締めてもらえるものだとばかり思っていた。何せ自分は、とても怖い思いをしたのだから。
パシンッ
けれどそれは、千彩の思い違いで。乾いた音と左頬に走る痛み。予想もしていなかった出来事に、千彩の目が丸くなる。
「あほかっ!何で約束守らんねん!俺がどんだけ心配したと思っとるんや!」
固まったままの千彩を抱き締め、智人は大声で訴える。その声は震えていて、今にも泣き出しそうだった。
「ちー坊」
「おにー…さま」
吉村の顔を見た途端、安心した千彩の目から一気に涙が溢れた。何で?どうして?そればかりがぐるぐると頭の中を回り、不安と恐怖が同時に押し寄せてくる。
「ちさ…怖かった」
「怖かった。ちゃうわ。俺の方が怖かったわ。何で約束破ってん、千彩」
震える千彩の頭を撫でながら、智人は涙声のままで。ここならば騒がない。そんな悠真の思いは、親友の手によって見事に打ち砕かれた。
「取り敢えず…座ろや。ここ、ファミレスやから」
遠慮気味に出した言葉も、完全に無視されてしまって。無理やりに肩を押して座らせ、トレー片手に固まっている店員にペコリと頭を下げた。
「すいません、騒がしくして。コーヒー二つお願いします」
「かしこ…まりました」
そそくさと逃げるように去って行く店員の背中を見送りながら、悠真はふぅっとため息を吐く。
こうなることは大方予想はついていた。だからこそここを選んだ。いつでも冷静に状況判断が出来る智人ならば、公衆の面前で騒いだりはしない。
問題は晴人だ。そう思っていた。

