Secret Lover's Night 【連載版】

「お名前はー?」
「ちさ、です」
「だからちーちゃんか。おにーさんはけーちゃんって呼んでなー」
「けーちゃん?」
「そうそう!ちーちゃんは何歳ですかー?お家はー?」
「17や言うたやろ。恵介、取り敢えず落ち着け」

そのやり取りを聞きながら、いよいよ恵介の行く末が心配になってきたのも事実。落ち着けと制し、背中にへばり付いたままの千彩をカウンターチェアに座るように促す。

「ジュース入れたろ。泣いたから喉乾いたやろ?」
「うん」

グラスを渡されて飲みかけたものの、どうにも背後から自分を見つめる恵介が気になるようで。チラチラと振り返りながら、千彩はゆっくりと朝食時にも出された透明度の高いアップルジュースを飲み干した。

「おかわり?」
「んーん。ねぇ、はる」
「ん?」
「いつからけーちゃんはここにおるの?どこから来たの?」

幾つか疑問を連ねる千彩の表情に、全く悪意の色はなくて。不思議そうに首を傾げながら空いたグラスを運んで来た千彩の頭を撫で、恵介に対するよりも数段優しい声音で答えてやる。

「けーちゃん…はなぁ、俺の友達なんや」
「友達?」
「そう。俺の仕事カメラマンって言ったやろ?こいつの仕事はスタイリスト」
「すたい?」
「モデルさんの服選んだりする仕事」
「服屋さん?」
「服…まぁ、売ってはないけどな」

そこまで説明して、漸く本題に入る。

長かった…と、恵介が到着してからの数分を思い返し、晴人は大きく息を吐いた。