相変わらずソファに腰掛けて俯いたままの晴人と、その姿を視界に入れないように背を向けてダイニングチェアに腰掛ける智人。

ふた月ぶりに再会した兄弟の仲は、周りが嫌になるほど最悪だった。


「いい加減にしたら?君達が兄弟ゲンカしたところで、何も解決しないよ」


温厚なフリをしていたメーシーも、そろそろ苛立ち始めた。それを見て、マリが慌てて吉村を呼ぶ。

「ねぇ、まだ見つからないの?仕事が遅いんじゃない、Japanese mafia」
「いや…そない言われましてもこればっかりは…」
「もうっ!これだからイヤなのよ、日本人は!」

プイッと顔を背けたマリは、表情にこそ出さないけれど内心はとても焦っていた。

この状態が長く続けば、メーシーの機嫌がもたない。完全にキレてしまえば、自分では到底手に負えない男なのだ。それだけは何としても避けたい。

そう思うマリは、じっと吉村を睨んだ。

「アタシも捜しに行くわ!」
「いいから麻理子はそっちの部屋で大人しくしてて」

ピシャリと拒絶され、ぶぅっと頬を膨らませながらもマリはメーシーに従う。いつも従っているのはメーシー。そんなイメージが強いだけに、恵介は控え目に笑い声を漏らした。

「何笑ってんの?ケイ坊」
「いや…意外やなーと思って」
「俺だって男だからね。言う時は言うよ」

そんなイメージ無いだろうけど。と続けたメーシーの言葉を遮るように、今度は吉村の携帯がけたたましい電子音を響かせた。

「はい、吉村」

低く響く声に、再び場に緊張が走る。祈るように吉村を見つめ思う。どうか、どうか無事でありますように…と。

けれど、その願いも空しく、吉村が小さな機械相手に放ったのは怒声だった。


「揃いも揃ってどないしとんじゃ!見つけ出すまで戻ってくんな!」


一方的に怒鳴りつけ電話を切った吉村の肩を、今までじっとソファに座っていた晴人が勢い良く立ち上がってしっかりと掴む。