Secret Lover's Night 【連載版】

「何とか言えや!お兄!おい!」
「…ごめん」
「ごめんって…そんな言葉聞きたいんちゃうわ!」
「…ごめん」
「もう…ええ。話にならん。一生そうやって俯いて泣いとけ!千彩は俺が捜して連れて帰る!」

そう言って再び乱暴に晴人を解放して飛び出そうとした智人の腕を、黙って兄弟ゲンカを聞いていた吉村が掴む。

「トモさん、一旦落ち着いてください。じきうちのもんから連絡が入る思いますんで。せめてそれまで」

言葉は柔らかだけれど、目が笑っていない。それに気付いた智人は、強引にその腕を振り解いて隣室へと続く扉を勢い任せに引いた。

「パソコン借りるで」

晴人の返事を聞かないままパソコンを立ち上げた智人は、まずインターネットの履歴を調べ始めた。そして、それがアニメ関係と自分の所属するバンド関係のものばかりだったことにハッと息を呑む。

「吉村さん!横浜も捜してください!」
「横浜…でっか?」
「俺ら、今日横浜でライブやっとったんです。もしかしたら、アイツ俺と悠真に会いに横浜まで…」

見当違いだ。千彩は近所の公園で時雨に連れ去られ、今都内にある司馬家の屋敷の大きなベッドの上でスヤスヤと眠っているのだから。

けれど、それを知る人物はここには居ない。