Secret Lover's Night 【連載版】

『はいはーい。お疲れ』

コールした相手は、これでもか!というほど陽気な声で応えてくれて。それに安堵し、僅かだけれど晴の気分が上がる。

「今どこ?これからの予定は?」
『え?なになに?今日はそうゆうプレイ?』
「あほ。そんな趣味あるか。仕事中か?」
『移動中やで。今日はもう終わり。メシでも行く?デートの誘いなら歓迎やで』
「移動中?ラッキー。そのまま家寄ってや。新大久保の――」

誘いに答えず住所を告げると、「待って!待って!」と言いながらもナビで検索する音が聞こえる。そういう律儀なところが好きだ。

『直ぐ着く思うわ。俺、今新宿におるから。ナビが誤作動せんかったらーやけどな』
「おぉ。ナビに迷ったら新型に買い替えるからな!って伝えてくれ」
『やめてや!愛しいマイハニーやのに』

笑いながらノッてくれる友人は、同じ職場で働く同僚、仕事上のパートナーでもある。

専門学校の卒業を機に二人で上京し、それから数年。壊れること無く、最良の状態でこの関係を保ってきた。

たとえどんな苦難に遭遇しようが、「何とかなるやろー」と笑うこの友人のことが晴は好きだった。

「なぁ、恵介」
『ん?何?』
「何とかなるよな?」
『はい?何かあったん?』
「まぁ、色々」
『ははっ。大丈夫や。何とかなるわー』

この言葉だけは、何度聞いても気分を晴らしてくれる。

これも相性だろうか。と、10年を超えた付き合いに、今更ながら嬉しくなった。