Secret Lover's Night 【連載版】

「どないしたんや、急に」
「ん?おぉ。智の誕生日プレゼント渡しに、な」
「ほぉ」

晴人の言葉に目を細めた父は、いつになく嬉しそうで。吉村の到着を待たずに一本目を開け、今度は焼酎を抱えて来た。

「北海道土産は無いんか」
「いつの話や」
「つまみが要るやろ。母さん起こしてこい」
「いちいち起こさんでも、それくらい俺が作ったるわ」

そんなくだらないことで呼びつけるな!と、晴人はグッと言葉を堪えてキッチンに立つ。冷蔵庫から適当な物を漁り、何品か作ってみせた。

「なかなかやな」
「俺は有紀や智と違って、昔から家事は得意やからな」
「せやったな」

何に措いても優秀で、何一つ文句も言わず、一切手のかからなかった長男。そんな晴人と智人を何かにつけて比較し、父は昔から智人にキツかった。

「あいつなぁ、料理しよんや」
「料理?智が?」
「お前の彼女のためにな、毎日プリン作りよるんや」
「え?あれ、智が作ったん!?」
「せや。味もなかなかのもんなんやぞ」

一つだけ残っていた冷蔵庫の中の手作りプリンは、母が作ったものだとばかり思っていた。それを作ったのがあの…一切家の手伝いをしなかった智人だったとは。

青天の霹靂と言えば大袈裟かもしれないけれど、晴人にとってはそれほどに衝撃的だった。

「一個あったんやけど、食ってええかな?」
「どうせ明日にはまた新しいの作りよるから大丈夫やろ」
「ちぃの朝の分は…あるな。よし、味見したろ」

冷蔵庫を開き、朝食後に千彩が食べるだろうプリンがあることを確認して、晴人は興味深げにそれを口へと運んだ。

「おぉ…なかなかやん」
「やろ?成長したんや、あいつもな」

千彩に接するようになってから、智人は以前とは比べ物にならないくらい成長した。それは父の目にも明らかで。本人の前では決して口には出さないのだけれど、こうして酒が入ると決まって智人の話をした。

「お前もちょっとは成長したんか?」
「俺?」
「何しとったんや、帰ってきてない間」
「仕事や、仕事。売れっ子やからな」

食べ終わったプリンの器を片付け、晴人は玄関から聞こえてきた物音にリビングの扉を開いた。