Secret Lover's Night 【連載版】

高校に入学し、中間考査も終わった頃。廊下に貼り出された順位表を前に、智人は教師の発した屈辱的な言葉を聞いてしまった。


「三木の三番目はこの程度か」


順位が貼り出されるのは、200人以上が在籍する中のトップ20。ギリギリとは言えどその中に名を連ねることが出来ているということは、成績は悪くはなかった。寧ろ、良い。

けれど、入学時からずっとトップ5をキープし続けてそのまま卒業した有紀と晴人と比べれば、「この程度」と言われてしまう成績。

不用意に発した教師のその言葉に、智人の中の「負けん気」の糸がプツリと切れた。そのまま学校を抜け出し、家にも戻らなかった。


家に戻ったのは、それから二日後。

心配した両親が警察に捜索願を出しに行く寸前で戻り、父に酷く叱られた。けれど智人は、いくら殴られても責め立てられても、決してその理由は口にしなかった。

そのまま家を飛び出し、街をフラつくうちに悪い仲間もできた。タバコを覚え、酒を覚え、バイクで走り回って鬱憤を晴らそうとする毎日。

それでも消えないイライラに、頭がどうにかなってしまいそうな日々。心配した兄が自分を探していると聞くだけで、何もかも壊してしまいたくなるような衝動に駆られた。