湯船に浸かる千彩を見守りながら、智人は晴人にどう言い訳をしようが頭を悩ませていた。
ただでさえ、いくら水着を着ているとは言え兄の婚約者一緒に風呂に入るのは如何なものか…と思っていたのだ。兄がまだ手を出していないと知ってしまった今、如何なものか…は罪悪感へと形を変えてしまう。
けれど、つい先程まで不安定な状態だった千彩にその話を切り出すわけにもいかず、有紀の昔話を聞かせてやりながらも智人の頭の中はそのことで一杯だった。
「ねー、ともと」
「んー?」
「ともとはカノジョいないの?」
水着姿で湯船に浸かる千彩に不意に問われ、腰にタオルを巻いて椅子に腰かけた状態の智人はふぅっと大きく息を吐き出した。
「おらんなぁ」
「なんで?」
「何でってか。そりゃまた難しい質問やな」
この状態での会話が気に入っている千彩は、ここでは上機嫌に話をしてくれて。それは智人も助かってはいるのだけれど、こうして不意に難しい質問を投げかけてこられると困ってしまう。
「カノジョって、一番愛してる人のことなんやって」
「おぉ、そうか」
「ともとは愛してる人いないの?」
愛してる人と言われ、一番に思い浮かぶ顔は年上の幼なじみの顔で。晴人と恵介について上京し、泣いて戻って来てから気まずくなったな…と、古傷がズキンと痛んだ。
「俺が愛してるんはギターやな」
「ギターって、今日ともとが弾いてたやつでしょ?」
「せや。カッコ良かったやろ」
「うん!」
有紀と共にライブ会場に来ていた千彩は、あまりに大きな音に両手で耳を塞いで立ち竦んでいて。ステージ上から見えたその様子に、智人は何度か噴き出しそうになった。
「おっきな音やったねー」
「やなぁ。慣れたらそうでもなくなるけどな」
「楽しかった?」
「ん?」
「ともと、いっぱい笑ってたよ」
それはファンサービスだ。と言いたいところなのだけれど、千彩に言っても通じないのはわかっている。下手に話を長引かせるよりは、さっさと納得させて湯船から上げたいという思いの方が強く出た。
ただでさえ、いくら水着を着ているとは言え兄の婚約者一緒に風呂に入るのは如何なものか…と思っていたのだ。兄がまだ手を出していないと知ってしまった今、如何なものか…は罪悪感へと形を変えてしまう。
けれど、つい先程まで不安定な状態だった千彩にその話を切り出すわけにもいかず、有紀の昔話を聞かせてやりながらも智人の頭の中はそのことで一杯だった。
「ねー、ともと」
「んー?」
「ともとはカノジョいないの?」
水着姿で湯船に浸かる千彩に不意に問われ、腰にタオルを巻いて椅子に腰かけた状態の智人はふぅっと大きく息を吐き出した。
「おらんなぁ」
「なんで?」
「何でってか。そりゃまた難しい質問やな」
この状態での会話が気に入っている千彩は、ここでは上機嫌に話をしてくれて。それは智人も助かってはいるのだけれど、こうして不意に難しい質問を投げかけてこられると困ってしまう。
「カノジョって、一番愛してる人のことなんやって」
「おぉ、そうか」
「ともとは愛してる人いないの?」
愛してる人と言われ、一番に思い浮かぶ顔は年上の幼なじみの顔で。晴人と恵介について上京し、泣いて戻って来てから気まずくなったな…と、古傷がズキンと痛んだ。
「俺が愛してるんはギターやな」
「ギターって、今日ともとが弾いてたやつでしょ?」
「せや。カッコ良かったやろ」
「うん!」
有紀と共にライブ会場に来ていた千彩は、あまりに大きな音に両手で耳を塞いで立ち竦んでいて。ステージ上から見えたその様子に、智人は何度か噴き出しそうになった。
「おっきな音やったねー」
「やなぁ。慣れたらそうでもなくなるけどな」
「楽しかった?」
「ん?」
「ともと、いっぱい笑ってたよ」
それはファンサービスだ。と言いたいところなのだけれど、千彩に言っても通じないのはわかっている。下手に話を長引かせるよりは、さっさと納得させて湯船から上げたいという思いの方が強く出た。

