「ともと、ごめんなさい。ちさのせい?ごめんなさい…」
千彩のせいだと言えばそうなのだけれど、この状態の千彩にそれを言うわけにもいかず。ゆっくりと体を捩って千彩と向き合い、ポンポンと背中を叩きながら千彩の震えが落ち着くのを待った。
「ごめんなさい…ごめんなさい…ちさを置いて行かないで…」
智人に縋り付きながら何度もそう繰り返す千彩を前に、つい数分前まで和やかだった空気は一変した。
そして、そんな様子をじっと見つめていた吉村の胸は、まるで何かに掴まれたかのようにグッと締め付けられて声も出ないほどに痛む。
「千彩、大丈夫や。俺はどっこも行かへん」
「ともと…ごめんなさい…」
「大丈夫や。怒ってへんから」
こんな時千彩が決まって思い出すのは、「ちーちゃんは連れて行けない」と言っていた母の表情で。怒っているわけでも悲しんでいるわけでもなく、ただただ真っ直ぐに自分の目を見つめ、諭すように言っていた穏やかな母の表情。
「ママ…」
「言うたやろ?お前のママは、お前に幸せになって欲しかったんや。お前が晴人に会えるように、幸せになって欲しくて置いて行ったんや。お前が嫌いやったからやない」
「ママ…」
「大丈夫や。お前は幸せになるんや。ママのお願い聞いてやらなあかんぞ」
千彩の頭に顎先を乗せ、抱き締めながらゆっくりと諭す智人。こんなことを毎日しているのだろうか…と表情を歪めた吉村に、母が小声で声を掛けた。
千彩のせいだと言えばそうなのだけれど、この状態の千彩にそれを言うわけにもいかず。ゆっくりと体を捩って千彩と向き合い、ポンポンと背中を叩きながら千彩の震えが落ち着くのを待った。
「ごめんなさい…ごめんなさい…ちさを置いて行かないで…」
智人に縋り付きながら何度もそう繰り返す千彩を前に、つい数分前まで和やかだった空気は一変した。
そして、そんな様子をじっと見つめていた吉村の胸は、まるで何かに掴まれたかのようにグッと締め付けられて声も出ないほどに痛む。
「千彩、大丈夫や。俺はどっこも行かへん」
「ともと…ごめんなさい…」
「大丈夫や。怒ってへんから」
こんな時千彩が決まって思い出すのは、「ちーちゃんは連れて行けない」と言っていた母の表情で。怒っているわけでも悲しんでいるわけでもなく、ただただ真っ直ぐに自分の目を見つめ、諭すように言っていた穏やかな母の表情。
「ママ…」
「言うたやろ?お前のママは、お前に幸せになって欲しかったんや。お前が晴人に会えるように、幸せになって欲しくて置いて行ったんや。お前が嫌いやったからやない」
「ママ…」
「大丈夫や。お前は幸せになるんや。ママのお願い聞いてやらなあかんぞ」
千彩の頭に顎先を乗せ、抱き締めながらゆっくりと諭す智人。こんなことを毎日しているのだろうか…と表情を歪めた吉村に、母が小声で声を掛けた。

