「薩摩の芋ですわ」
「ええもん持って来とるやないか」
「親父さんと飲もう思うてまして」
「その気やないか」
「ちーちゃんも起きたし、ほんなら皆でご飯にしましょか」
エプロンを着け直した母も、何やら嬉しそうで。これは酒盛りになるな…と覚悟した智人は、その前に用事を済ませてしまおうと父の膝の上に座ろうとしていた千彩の腕を引いて立ち上がった。
「千彩、風呂入るぞ」
「お風呂?ご飯まだやのに?」
「おぉ。二階行ってパジャマとパンツ取って来い。待っといたるから」
「はーい」
ペタペタと足音を立てながら去って行く千彩を、三木家の三人は当たり前のように見送っていて。智人と千彩のやり取りにツッコミを入れたのは、唯一事情を知らない吉村だけだった。
「トモさん、ちー坊と一緒に風呂入るんでっか?」
「あぁ…湯船に浸かるん怖がるんで、慣れるまで」
「そりゃまた…」
さすがにそれは晴人が怒るのではないか…と、吉村が思うのは当然のことで。両親も晴人のことを思いそれは止めたのだけれど、言い出したのが千彩なだけにあまりキツくは言えなかった。
「私と入ろうって言うたんやけどね、どうしても智人がええって言うんよ」
「別にええがな。裸で入っとるわけやあるまいし」
「せやかて…ねぇ?」
晴人が自粛してそこまで進んでいないことを知らない智人は悪びれもなくそう言うのだけれど、知ってしまっている三人はどうしても「晴人に申し訳ない…」と思ってしまう。
それを伝えようと試みたのが、千彩の父親である吉村だ。
「トモさん、あのー…」
「はい?」
「あのー…何や…ハルさんとちー坊、まだそうゆうことしてへんの知ってまっか?」
「そうゆうことって?」
「いやー…まぁ、そうゆう行為ですわな」
「そうゆう行為って…まさか…」
「はぁ。まだなんですわ」
「はぁっ!?先言えよっ!何で言わへんねんっ!」
驚く智人の怒りの矛先は、複雑な表情をした両親に向かう。それもそうだろう。自分だけまた事情を知らされていなかったのだから、智人としてもたまったものではない。
「俺がお兄に怒られるやないかっ!」
「せやかて、ちーちゃんが言い出したんやからしゃぁないやないの」
「そんなんで「ほなしゃぁないなー」て笑うわけないやろ!あのロリコン嘗めんなよ!」
「ほな、お兄ちゃんには黙ってたら?」
「あほか!千彩が喋るわっ!」
ここ数日溜まりに溜まっていた鬱憤が一気に溢れ出た智人は、完全に声のボリュームを落とすことを失念していて。バタバタと階段を駆け降りる音にも気付かず、大声を上げ続けた。
そして、ドンッという衝撃と何かが腰に巻き付く感触にハッと息を呑んだ。
「ええもん持って来とるやないか」
「親父さんと飲もう思うてまして」
「その気やないか」
「ちーちゃんも起きたし、ほんなら皆でご飯にしましょか」
エプロンを着け直した母も、何やら嬉しそうで。これは酒盛りになるな…と覚悟した智人は、その前に用事を済ませてしまおうと父の膝の上に座ろうとしていた千彩の腕を引いて立ち上がった。
「千彩、風呂入るぞ」
「お風呂?ご飯まだやのに?」
「おぉ。二階行ってパジャマとパンツ取って来い。待っといたるから」
「はーい」
ペタペタと足音を立てながら去って行く千彩を、三木家の三人は当たり前のように見送っていて。智人と千彩のやり取りにツッコミを入れたのは、唯一事情を知らない吉村だけだった。
「トモさん、ちー坊と一緒に風呂入るんでっか?」
「あぁ…湯船に浸かるん怖がるんで、慣れるまで」
「そりゃまた…」
さすがにそれは晴人が怒るのではないか…と、吉村が思うのは当然のことで。両親も晴人のことを思いそれは止めたのだけれど、言い出したのが千彩なだけにあまりキツくは言えなかった。
「私と入ろうって言うたんやけどね、どうしても智人がええって言うんよ」
「別にええがな。裸で入っとるわけやあるまいし」
「せやかて…ねぇ?」
晴人が自粛してそこまで進んでいないことを知らない智人は悪びれもなくそう言うのだけれど、知ってしまっている三人はどうしても「晴人に申し訳ない…」と思ってしまう。
それを伝えようと試みたのが、千彩の父親である吉村だ。
「トモさん、あのー…」
「はい?」
「あのー…何や…ハルさんとちー坊、まだそうゆうことしてへんの知ってまっか?」
「そうゆうことって?」
「いやー…まぁ、そうゆう行為ですわな」
「そうゆう行為って…まさか…」
「はぁ。まだなんですわ」
「はぁっ!?先言えよっ!何で言わへんねんっ!」
驚く智人の怒りの矛先は、複雑な表情をした両親に向かう。それもそうだろう。自分だけまた事情を知らされていなかったのだから、智人としてもたまったものではない。
「俺がお兄に怒られるやないかっ!」
「せやかて、ちーちゃんが言い出したんやからしゃぁないやないの」
「そんなんで「ほなしゃぁないなー」て笑うわけないやろ!あのロリコン嘗めんなよ!」
「ほな、お兄ちゃんには黙ってたら?」
「あほか!千彩が喋るわっ!」
ここ数日溜まりに溜まっていた鬱憤が一気に溢れ出た智人は、完全に声のボリュームを落とすことを失念していて。バタバタと階段を駆け降りる音にも気付かず、大声を上げ続けた。
そして、ドンッという衝撃と何かが腰に巻き付く感触にハッと息を呑んだ。

