「俺、正直最初は千彩のことあんま好きやなかったんです」
突然の告白に、吉村は続ける言葉が見当たらない。それを察した智人は、苦笑いで話を続けた。
「この家ん中で、俺だけ事情を知らんかったんです。せやから、変な奴やってずっと思ってました」
「あぁ…せやったんでっか」
確かに、事情を知らなければ、17歳にしては世間知らずどころか幼過ぎる千彩は「変な奴」だろう。けれど、それを父親である自分の前で言うとはなかなか度胸がある。と、吉村は思った。
だからこそ、智人の思いを最後まで一字一句逃さず聞こう、と。
「千彩がこんな状態なって、お兄や親父から事情聞いて、確かに驚いたけど…わかったことが一つあったんです」
「はい」
「こんな奴やから、お兄は結婚しようって…一生守っていこうって決めたんやって」
「そうなんですかねぇ」
「お兄は、俺の憧れやったんです。何しても敵わんかったけど、やっぱお兄を超えたい思うて必死になって曲作ってきました。そんなお兄が、千彩のことになったらごっつカッコ悪いんです。慌てふためいとるし、泣きそうな顔するし。そんなん見とったら、協力したろう思うやないですか?家族になるんやったら、俺も力になってやらんとって」
その言葉は、吉村にとって何より嬉しい言葉だった。
晴人に対しても、「責任を取れ」とか何だとか迫った覚えは無い。晴人自身が千彩を望んでくれ、認めてくれと頭を下げてくれた。
その時の嬉しさが、再び吉村の胸に込み上げる。
「吉村さんも仕事忙しいみたいやし、千彩のことは俺に任せてください。何とか治してみせるんで」
「はい…お願いします」
堪え切れなかった涙が、頭を下げたと同時に吉村の頬を伝った。
千彩は何て幸せ者なのだろう…とグッと唇を噛んで俯く吉村を、智人は照れ笑いをしながらただただ黙って見つめていた。
突然の告白に、吉村は続ける言葉が見当たらない。それを察した智人は、苦笑いで話を続けた。
「この家ん中で、俺だけ事情を知らんかったんです。せやから、変な奴やってずっと思ってました」
「あぁ…せやったんでっか」
確かに、事情を知らなければ、17歳にしては世間知らずどころか幼過ぎる千彩は「変な奴」だろう。けれど、それを父親である自分の前で言うとはなかなか度胸がある。と、吉村は思った。
だからこそ、智人の思いを最後まで一字一句逃さず聞こう、と。
「千彩がこんな状態なって、お兄や親父から事情聞いて、確かに驚いたけど…わかったことが一つあったんです」
「はい」
「こんな奴やから、お兄は結婚しようって…一生守っていこうって決めたんやって」
「そうなんですかねぇ」
「お兄は、俺の憧れやったんです。何しても敵わんかったけど、やっぱお兄を超えたい思うて必死になって曲作ってきました。そんなお兄が、千彩のことになったらごっつカッコ悪いんです。慌てふためいとるし、泣きそうな顔するし。そんなん見とったら、協力したろう思うやないですか?家族になるんやったら、俺も力になってやらんとって」
その言葉は、吉村にとって何より嬉しい言葉だった。
晴人に対しても、「責任を取れ」とか何だとか迫った覚えは無い。晴人自身が千彩を望んでくれ、認めてくれと頭を下げてくれた。
その時の嬉しさが、再び吉村の胸に込み上げる。
「吉村さんも仕事忙しいみたいやし、千彩のことは俺に任せてください。何とか治してみせるんで」
「はい…お願いします」
堪え切れなかった涙が、頭を下げたと同時に吉村の頬を伝った。
千彩は何て幸せ者なのだろう…とグッと唇を噛んで俯く吉村を、智人は照れ笑いをしながらただただ黙って見つめていた。

