晴人が待ち焦がれた愛しい声を聞けたのは、マリを含めた四人で食事を終えて次の店へと移動している最中だった。
画面に表示されるのは、智人の名。
けれど、晴人にはそれが千彩からのコールだとすぐにわかった。
「はい。ちぃ?」
『うん!ごめんね。電話、気付かなかった』
「そっか。何しとったんや?」
『映画見てた。ともとと、ゆーまも一緒に』
「へぇ。映画行ってたんか」
晴人自身、千彩を映画に連れて行ったことはない。けれど、実家に千彩が泊まりに行く度に智人が千彩を映画や買い物に連れて行っていることは知っていた。
「何見たん?」
『忍者!』
「そっかー。面白かったか?」
『うん!凄かったよ!木の上飛んでた!ちさも練習したら出来るかなぁって言ったら、ともとが無理に決まってるやろって言ってた』
あははっと無邪気に笑う千彩からは、不安定さは微塵も感じない。これのどこが…と思うものの、今朝ぐったりとしていた千彩の姿を思い出すと、晴人の胸はズキンと痛みを訴えた。
『はるー?』
「んー?」
『今何してるん?』
「今?恵介とメーシーと一緒に居るで」
『お仕事?』
「んー。今はちゃうかな」
『そっか』
いくら不自然に言葉を濁したとて、その不自然さは千彩には伝わらない。それを少し寂しく思いながら、晴人は電話の向こう側の千彩に問い掛けた。
「調子、悪いんやって?」
『調子?ちさ元気だよ』
「朝しんどそうにしとったがな。ごめんな、黙って帰って」
『うん。大丈夫』
無理をしている素振りは無い。けれど、智人がああまで言うのだ。今は安定しているだけで、すぐまた不安定な波が訪れるかもしれない。
それを思うと、慎重に言葉を選ばなければならなかった。
画面に表示されるのは、智人の名。
けれど、晴人にはそれが千彩からのコールだとすぐにわかった。
「はい。ちぃ?」
『うん!ごめんね。電話、気付かなかった』
「そっか。何しとったんや?」
『映画見てた。ともとと、ゆーまも一緒に』
「へぇ。映画行ってたんか」
晴人自身、千彩を映画に連れて行ったことはない。けれど、実家に千彩が泊まりに行く度に智人が千彩を映画や買い物に連れて行っていることは知っていた。
「何見たん?」
『忍者!』
「そっかー。面白かったか?」
『うん!凄かったよ!木の上飛んでた!ちさも練習したら出来るかなぁって言ったら、ともとが無理に決まってるやろって言ってた』
あははっと無邪気に笑う千彩からは、不安定さは微塵も感じない。これのどこが…と思うものの、今朝ぐったりとしていた千彩の姿を思い出すと、晴人の胸はズキンと痛みを訴えた。
『はるー?』
「んー?」
『今何してるん?』
「今?恵介とメーシーと一緒に居るで」
『お仕事?』
「んー。今はちゃうかな」
『そっか』
いくら不自然に言葉を濁したとて、その不自然さは千彩には伝わらない。それを少し寂しく思いながら、晴人は電話の向こう側の千彩に問い掛けた。
「調子、悪いんやって?」
『調子?ちさ元気だよ』
「朝しんどそうにしとったがな。ごめんな、黙って帰って」
『うん。大丈夫』
無理をしている素振りは無い。けれど、智人がああまで言うのだ。今は安定しているだけで、すぐまた不安定な波が訪れるかもしれない。
それを思うと、慎重に言葉を選ばなければならなかった。

