「その時お前がママと一緒に行ってたら、お前は晴人に会えてなかったで。それでもええんか?」
千彩にとって、晴人は絶対。おそらく、晴人の居ない生活など考えられないだろう。そう思う智人は、ゆっくりと千彩に語りかけた。
「晴人、好きか?」
「大好き」
「やろ?せやったら、晴人に会いたかったんちゃうん?お前、晴人と「幸せ守ろう」って約束したんちゃうん?」
「うん。した」
「お前のママは、それがわかってたんかもな」
「ママが?」
「わかってたから、連れて行かん方がええ思うたんちゃうか?」
これが一般的な17歳を相手にした語りだとするならば、智人は「不思議な人」と位置付けられることだろう。勿論、悪い意味で。
けれど、相手は千彩だ。何でも素直に聞き入れ、そして信じる。そんな千彩だからこそ、智人はわざとそんな言葉を選んだ。
「そう…かなぁ」
「絶対そうやわ。お前のママは、お前に幸せになってほしかったんやって」
「そっか。うん!」
「ちゃんとお礼言うとかなあかんな」
「うん!」
智人を見上げてにっこりと笑う千彩は、やはりどこまでも純真で。だからこそ傷付き易く、だからこそ脆い。
それを知った智人は、何とか自分の手でゼロまでとはいかないまでも、限りなくゼロに近い部分まで「崩れてしまう原因」を取り除いてやろうと決めた。
いつでもカッコ良かった兄がカッコ悪く見えるほどに我を忘れ、「守ろう」と、「愛そう」とする人。そんな千彩だからこそ、自分も守りたいと思う。
始まりはどうであれ、智人の決意は堅かった。
「もっと俺に色んなこと教えてくれるか?」
「どんなこと?」
「せやなぁ…お前のママのこととか、お兄様のこととか」
「うん。いいよ」
「あとは、晴人のこととか、恵介さんのこととか、メーシー?のこととか」
「うん。そしたら、お家に帰ったらいっぱい教えてあげるね」
これで少しはマシになるかもしれない。と、一仕事を終えた智人はふぅっと大きく息を吐き、二人と少し距離を取っている悠真を呼び寄せた。
「ハンバーグ食べたい人ー」
「はーい?」
「あっ!ちさも!」
「ほんなら、今日の晩メシはハンバーグに決定」
「ちさ、お手伝いする!」
「よし。お前はどうすんねん」
「え?はい。手伝います」
「よっしゃ。三人でスーパー行くぞ」
「おー!」
夕暮れに長く伸びる三人の影が、手と手で繋がる。まぁ、こんな日もいい。と、智人は暮れかけた茜色を見上げながら笑った。
千彩にとって、晴人は絶対。おそらく、晴人の居ない生活など考えられないだろう。そう思う智人は、ゆっくりと千彩に語りかけた。
「晴人、好きか?」
「大好き」
「やろ?せやったら、晴人に会いたかったんちゃうん?お前、晴人と「幸せ守ろう」って約束したんちゃうん?」
「うん。した」
「お前のママは、それがわかってたんかもな」
「ママが?」
「わかってたから、連れて行かん方がええ思うたんちゃうか?」
これが一般的な17歳を相手にした語りだとするならば、智人は「不思議な人」と位置付けられることだろう。勿論、悪い意味で。
けれど、相手は千彩だ。何でも素直に聞き入れ、そして信じる。そんな千彩だからこそ、智人はわざとそんな言葉を選んだ。
「そう…かなぁ」
「絶対そうやわ。お前のママは、お前に幸せになってほしかったんやって」
「そっか。うん!」
「ちゃんとお礼言うとかなあかんな」
「うん!」
智人を見上げてにっこりと笑う千彩は、やはりどこまでも純真で。だからこそ傷付き易く、だからこそ脆い。
それを知った智人は、何とか自分の手でゼロまでとはいかないまでも、限りなくゼロに近い部分まで「崩れてしまう原因」を取り除いてやろうと決めた。
いつでもカッコ良かった兄がカッコ悪く見えるほどに我を忘れ、「守ろう」と、「愛そう」とする人。そんな千彩だからこそ、自分も守りたいと思う。
始まりはどうであれ、智人の決意は堅かった。
「もっと俺に色んなこと教えてくれるか?」
「どんなこと?」
「せやなぁ…お前のママのこととか、お兄様のこととか」
「うん。いいよ」
「あとは、晴人のこととか、恵介さんのこととか、メーシー?のこととか」
「うん。そしたら、お家に帰ったらいっぱい教えてあげるね」
これで少しはマシになるかもしれない。と、一仕事を終えた智人はふぅっと大きく息を吐き、二人と少し距離を取っている悠真を呼び寄せた。
「ハンバーグ食べたい人ー」
「はーい?」
「あっ!ちさも!」
「ほんなら、今日の晩メシはハンバーグに決定」
「ちさ、お手伝いする!」
「よし。お前はどうすんねん」
「え?はい。手伝います」
「よっしゃ。三人でスーパー行くぞ」
「おー!」
夕暮れに長く伸びる三人の影が、手と手で繋がる。まぁ、こんな日もいい。と、智人は暮れかけた茜色を見上げながら笑った。

