Secret Lover's Night 【連載版】

メーシーが淹れてくれた濃いめのコーヒーを片手に事情を話すと、恵介の表情がものの見事に歪んだ。智人をよく知るだけに腹が立つのか、ギュッと眉間に皺を寄せたまま黙り込んでいる。

「んな顔すんな。何とかなる言うたんはお前やろ」
「うー…ん」
「ならんのか?何とか」

冷静になって話せば、気持ちの整理もつく。深い考えまでは読めないけれど、何とか千彩と自分との関係を良い方向に持って行こうと智人は動いてくれている。そう思えるくらいには落ち着いた。

勿論、こうして皆に話すまでは、晴人の頭も心も悲鳴を上げていたのだけれど。


「何とかなるで。大丈夫。俺が今すぐ智人に電話するから!」


意気込む恵介の肩をガッシリと掴み、じっと黙って話を聞いていたメーシーがゆるく首を横に振った。

「そうゆう何とかじゃないだろ」
「いや、だって…」
「俺達が今すべき「何とか」は、王子を支えることであって、王子の弟さんを責めることじゃない」
「でも…」

納得がいかない恵介は、それでも尚首を縦には振らない。そんな恵介に、うーんと何かを考えていたマリが視線を寄越した。

「マリちゃんかてそう思うやろ?ちーちゃんこっち連れて帰って来て、俺らで面倒みたええやんな?」

まるで藁にも縋るような思いで見つめると、マリは両手を広げて肩を竦めた。

「アタシにはよくわかんないわ」
「マリちゃんまで…」
「でも、princessがこっちに来たところで、アタシ達の仕事のスケジュールは空けられない。そうよね?メーシー」
「そうだね」

感情的なマリならば、たとえ一時的にでも自分の味方をしてくれると思った。見事に当てが外れ、恵介はガックリと項垂れて視線を落とす。

そんな恵介に声を掛けたのが、この揉め事の当事者である晴人だ。